金型屋が本気で検証する3Dプリント試作①(積層が不利な向きで評価する理由)
なぜ「積層が不利な向き」で3Dプリント試作を行うのか
3Dプリンターによる試作というと、
「できるだけきれいに」「失敗しない向きで」
造形するイメージを持たれることが多いと思います。
しかし、金型設計を前提とした試作では、必ずしもそれが最適とは限りません。
本記事では、私が評価用サンプルをあえて積層条件として不利な向きで造形した理由と、その考え方について解説します。
**********
私のバックグラウンドについて
私はこれまで、プラスチック金型の設計業務に携わってきました。
また過去には、光造形方式(SLA)の3Dプリンター業務に約1年間関わった経験もあります。
そのため、
*金型で問題になりやすい形状
*光造形と熱溶解積層(FDM)の違い
*試作段階で見ておくべきポイント
を、設計と試作の両方の視点から考えることができます。
「きれいに造形する」ことが目的ではない
量産を前提とした試作で本当に知りたいのは、
*この形状は成立するのか
*寸法はどこがズレやすいのか
*問題は設計なのか、製法なのか
といった点です。
そのため当方では、
あえて積層方向として精度が出にくい向きで試作を行うことがあります。
理由は単純で、問題が出るなら、早い段階で出した方がよいからです。
**********
積層が不利な向きで分かること
積層方向を厳しくすると、以下のような点が顕在化します。
* Z方向寸法のばらつき
* R形状・曲面での段差
* 円筒形状の潰れ
* 内径寸法の縮み傾向
これらは、金型でも
* 抜き勾配
* 冷却不均一
* 収縮差
として問題になることが多い項目です。
3Dプリント試作は、それらのリスクを事前に可視化する手段として非常に有効です。
**********
光造形との違いを踏まえたFDM評価
光造形(SLA)は、
* 表面がきれい
* 微細形状が出やすい
というメリットがあります。
一方で、
* 材料特性が量産樹脂と異なる
* 強度評価には向かない
という側面もあります。
FDM方式は表面品質では劣りますが、実際の成形品に近い材料特性で評価できるという大きな利点があります。
そのため、量産前の形状・構造確認では、FDMでの試作を選択するケースも多くなっています。
**********
「問題が出ない」より「問題が見える」試作
試作で重要なのは、「問題が出なかった」という結果ではありません。
* どこに注意すべきか
* どこを設計で逃がすか
* 金型で対応すべきか
を判断できる材料を得ることです。
そのため私は、積層が不利な条件でも成立するかを一つの基準として試作を行っています。
**********
次回予告
次回は、評価用に作成した ▢30立方体を例に、
PETG と PETG-CF の寸法差・収縮傾向について解説します。
材料選定が、試作評価にどのような影響を与えるかを掘り下げる予定です。
**********
※本記事は「金型を作る前に」シリーズの第1回です。